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高松地方裁判所 平成7年(行ウ)5号 判決

香川県丸亀市塩屋町五丁目四番三号

原告

横田熟

香川県丸亀市大手町二丁目一番二三号

被告

丸亀税務署長 宇野宏

右指定代理人

鈴木正紀

平賀孝男

片岡博司

三谷博之

堤正人

黒田保俊

宮井雅規

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告が平成六年五月一三日付けでした原告の平成三年分所得税の更正(ただし、平成六年六月三〇日付け異議決定により減額された後のもの)のうち納付すべき税額三五万九三〇〇円を越える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、右異議決定により減額された後のもの)を取り消す。

第二事案の概要

一  当事者間に争いのない事実

1  課税等の経緯

(一) 原告は、平成四年三月一六日、平成三年分の所得税につき、別表(課税等経過表)の「確定申告」欄記載のとおりの確定申告書を提出して、確定申告を行った。

(二) 被告は、右確定申告書に誤りがあったため原告に修正を求めたところ、原告は、平成四年八月二七日、別表の「修正申告」欄〈1〉ないし〈18〉記載のとおりの修正申告書を提出して、修正申告を行った。被告は、この修正申告により、同年九月七日、同欄〈19〉のとおり過少申告加算税の賦課決定処分をした。

(三) 被告は、平成六年五月一三日付けで、別表の「更正処分等」欄記載のとおり、原告の平成三年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件更正処分等」という。)を行った。

(四) 原告は、本件更正処分等を不服として、平成六年五月二三日、被告に対し、別表の「異議申立て」欄記載のとおり異議を申し立てた。

(五) 被告は、右異議につき平成六年六月三〇日付けで別表の「異議決定」欄記載のとおり決定し、本件更正処分等の一部を取り消した。

(六) 原告は、右決定を不服として、平成六年七月一一日、国税不服審判所長に対し、別表の「審査請求」欄記載のとおり審査請求を行ったが、国税不服審判所長は、平成七年四月二八日付けで、右審査請求を棄却した。

2  総合課税の所得金額等

(一) 原告の平成三年分の給与所得の金額は三四二万五〇〇〇円、同じく雑所得の金額は二四六万三〇一五円であって、その合計所得金額は五八八万八〇一五円である。

(二) 右所得から差し引かれるべき金額は、医療費控除四一万二一七〇円、社会保険料控除二五万七六八一円、生命保険料控除五万円、配偶者控除三五万円、基礎控除三五万円の合計一四一万九八五一円である。

(三) 課税される所得金額は、右(一)の合計額から(二)の合計額を差し引いた四四六万八〇〇〇円(国税通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満切捨て)である(なお、被告は、異議決定において、この課税される所得金額を、別表の「異議決定」欄〈12〉のとおり四八一万八〇〇〇円としているが、これは計算誤りである。)。

(四) 右(三)の所得金額に対する税額は五九万三六〇〇円(国税通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満切捨て)である。

3  分離長期譲渡所得等

(一) 原告は、平成三年五月二四日、横浜市港北区日吉本町二丁目二〇六五番一七宅地七七二〇・五六平方メートルの持分一〇万分の七六五、同土地上のマンションB-一〇三号室(家屋番号日吉本町二丁目二〇六五番地一七の二)、駐車場建物専有部分付属バルコニー及び倉庫(以下「本件不動産」という。)を、代金七五〇〇万円で太平電業株式会社に売り渡した(以下「本件譲渡」という。)。

(二) 本件不動産は、原告が昭和四四年一一月二四日にその名義で取得し、本件譲渡をするまで居住の用に供していたものであるから、本件譲渡による所得については、平成五年法律第一〇号による改正前の租税特別措置法三一条の三(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)及び同法三五条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)に規定する特例が適用され、三〇〇〇万円が控除される。

(三) 本件不動産の取得費の額は、取得価額一一四五万円、登記費用等の額一四万八三〇〇円及び改良費の額一八三万九八三〇円の合計額一三四三万八一三〇円から償却費相当額一六六万六六六〇円を控除した一一七七万一四七〇円である。(四) 本件譲渡の費用の額は一一四万円である。

4  源泉徴収税額

原告の平成三年分所得税に係る源泉徴収税額は三六万二三〇七円である。

二  争点

本件の争点は、要するに、分離長期譲渡所得の関係で、本件不動産が、原告の単独所有であったのか、原告及びその妻横田節子の共有であったのか、という点にあり、この点に関する双方の主張の要旨は次のとおりである。

1  被告の主張

(一) 本件不動産は原告の単独所有であったから、課税される分離長期譲渡所得金額は、本件譲渡の価額七五〇〇万円から取得費の額一一七七万一四七〇円、譲渡費用の額一一四万円及び前記特別控除額三〇〇〇万円を差し引いた三二〇八万八〇〇〇円(前記同様に一〇〇〇円未満切捨て)であり、これに対する税額は、前記租税特別措置法三一条の三第一項の規定により三二〇万八八〇〇円となる。

(二) 右税額と前記一、2、(四)の税額の合計額は三八〇万二四〇〇円であり、納付すべき税額は、右合計額から前記一、4の源泉徴収税額を差し引いた三四四万円(前記同様一〇〇円未満切捨て)となる。

(三) 本件においては、過少申告加算税の基礎となった事実が、本件更正前の税額の計算の基礎とされなかったことにつき、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条一項及び二項の規定に基づき計算すると、過少申告加算税の額は四四万八〇〇〇円となる。

2  原告の主張

原告は、単独で本件不動産を購入したが、その購入代金の約二分の一に相当する六〇〇万円は、原告の妻節子がその両親から借り受けて支払に充てたところ、原告には右借受金を返済できるほどの経済的余裕がなかったことなどから、原告と節子は右購入後、本件不動産を折半共有とすることを合意した上、約二二年間にわたり共同の住居としてこれを利用してきた。したがって、本件不動産は原告及び節子の二分の一宛の共有に帰していたものであるから、原告に関しては、課税される分離長期譲渡所得金額は、本件譲渡の価額の半額三七五〇万円から取得費の額の半額五八八万五七三五円、譲渡費用の額の半額五七万円及び特別控除額三〇〇〇万円を差し引いた一〇四万四〇〇〇円である。

第三争点に対する判断

一1  証拠(乙二・三の各一・二、乙四、乙五の一・二、乙六の一ないし一一、乙七の一ないし一一、乙八の一ないし一四、乙九、乙一〇の一・二、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告は、単独で所有するものとして本件不動産を購入したものであり、その旨の登記を受けたが、その主張する妻節子との合意に基づく共有の登記を受けるにつき格別の支障はなかったにもかかわらず、これを受けておらず、また、本件譲渡の代金を自己名義の預金として管理運用し、更に、節子との共同生活の用に供するため、右代金の一部をもって香川県丸亀市内のマンションを購入したが、その購入契約及びそれに基づく登記をいずれも自己名義で行っていることが認められる。

2  甲八、甲九、甲一七及び甲一八(原告及び節子の陳述書)には、原告主張のとおり節子の両親からの借受け及び共有の合意がされた旨の記載があり、原告本人尋問においても同旨の供述がみられるけれども、これらを裏付ける資料がないし、仮に節子の両親から借り受けたとしても、それは、前記認定のとおり本件不動産は原告が単独で購入したものであることからして、その購入代金の債務者である原告が借り受け、節子は借受けの斡旋をしたにすぎなかったものとみるのが相当であるから、右記載及び供述はにわかに信用できない。

3  以上を総合して判断すると、本件不動産は原告の単独所有であったというべきである。

二  そうすると、原告の平成三年分所得税及び過少申告加算税は、前記被告の主張(一)ないし(三)のとおりとなるから、本件更正処分等(異議決定により減額された後のもの)は適法であり、原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 橋本都月 裁判官 佐藤正信)

別表

課税等経過表

〈省略〉

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